社会人がこれだけは知っておきたい法律の知識。パワハラ編
社会人になると色々なトラブルに巻き込まれる事がありますよね。
私は上司から『自殺したらええねん』と言われて悔しい経験をした事があります。
この発言は実は、刑法202条自殺教唆に当たります。
当時の私は仕事が上手く行かずに追い詰められてメンタルを崩してしまいました。
誰にも相談できずに苦しい日々を過ごしました。
哲学者ソクラテスが『無知は罪なり』という言葉を残してますが、賢くならなければ自分を守る事はできません。
このブログが、みなさんが同じような状況に追い込まれた時に、自分の身を守る手助けになれば幸いです。
早速、パワハラについて見ていきましょう。
「職場でのパワハラ防止を企業に義務付ける労働施策総合推進法の改正法(通称、パワハラ防止法)」が施行されることとなりました(中小企業は2022年4月から施行)。
そこで示された定義のポイント は次のようになります。
「職場内での地位や権限を背景に本来の業務範囲を超え、継続的に相手の人格と尊厳を侵害する言動を行い、就労関係を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」
さらに、厚生労働省は、「職場のパワーハラスメント」を6つに分類し、典型例を示しています。
①身体的な攻撃
暴行·傷害
②精神的な攻撃
脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言
③人間関係からの切り離し
隔離·仲間外し·無視
④過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
⑤過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
⑥個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
これまでは、どこまでがパワハラで、どこまでが指導なのか、その判断がつきにくいと
いう問題がありましたが、
現在、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が議論を進めていて、
①職場のパワハラの具体例
②該当例や該当しない例
③企業の措置義務
を『指針』で示すガイドラインを決定する方針ですので、それに基づき各企業は対策を求められます。
「マタハラ」「パワハラ」「セクハラ」は、要は権利侵害なので裁判ともなれば、民法第709条などの損害賠償を求める事が出来ます。
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
これに続く第710条は、財産以外の損害への賠償についての規定です。精神的苦痛に対して第709条と同じことが適応されるということです。
民法 第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
では、実際に、訴訟になったときに、どういう法律が適用されるのでしょうか?
まず、相手に対する刑法の「名誉野損罪(230条)」や「侮辱罪(231条)」などです。
刑法第230条(名誉毀損罪)
公然と事実を摘示し、人の名誉を段損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁鍋又は50万円以下の罰金に処する。
名誉毀損における原状回復には以下が適応されます。
民法 第723条
他人の名誉を鍛損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
刑法231条(侮辱罪)
事実を摘示せずに、公然と、人を侮辱した場合に成立します。 法定刑は、拘留又は科料です。 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
会社側が労働者に対して安全配慮義務が欠けてた場合は民法第415条も該当する可能性があります
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
企業には従業員を守る義務があるので、以下の労働契約法に基づいたものとなります。
労働契約法 第5条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
また、「民法第709条(不法行為による損害賠償)」での責任も会社、加害者双方に問えます。
さらには、民法第715条(使用者等の責任)の責任もありますので、
会社に対しては、セクハラ対策(使用者の安全配慮義務)を怠ったとして労働契約上の義務違反による民法415条の損害賠償請求を起こすことができます。
民法 715条
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
以前、ニュースになったトヨタのパワハラによる自殺事件について、労災を認定された遺族が、直接パワハラを行った上司ではなくて、会社に損害賠償を求めているのは、この条文を根拠にしたものです。
では、パワハラやマタハラに複数の人が絡んでいて、誰か決定的なダメージを被害者に与えたのか分からない場合はどうなるのでしょうか?
答えは、連帯責任です。
民法 第719条
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
ハラスメントに、暴力が加わると、現法の優害罪、暴行罪が問われます。
ここまでは、おもに賠償金など、お金での損害賠償を訴える方法を述べてきましたが、
指導と称して体罰が行われ、重傷を負わせたり、場合によっては、死に至らしめたりする
こともあります。
この場合は、刑法の傷害罪、暴行罪が当たります。
(傷害)
刑法 第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
その結果、死んでしまうと、傷害致死罪です。
(傷害致死)
刑法 第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
相手が怪我をしなかった場合は暴行罪です
(暴行)
刑法第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
実際には損害を与えなくても、おまえなんてクビなどと言って脅迫すると、当然、脅迫罪になります
(脅迫)
刑法 第222条
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し、害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
ビジネスマンのための『法律力』養成講座 小宮一慶さん著を僕なりにまとめてみました。
内容に興味を持って頂いた方は是非本を手に取ってみて下さい。